レイラは嘘のように嬉しいことが続いているが、嬉しいのはレイラだけだ。視線が合わないといつも胸が抉れた。



テーブルを挟んでレイラの正面に座ったルーカスは咳ばらいをしてから、視線を逸らしたまま話し始める。



「ここは俺の私室の隣の部屋だ。君はこれからここに住んでもらう」

(ここはルーカス様のお隣のお部屋?!同じ王城の中ですので、これはすでに同棲!)



ハッと天啓を得たレイラは、お隣暮らしを同棲と解釈した。

世界を破滅に導くほど絶世の美女であるレイラを、ルーカスはいつまでたってもまともに見ることができない。



「君の家は警備が手薄だから、ご両親に許可をもらってここに移ってもらった」


(強盗が入ってしまうくらいですものね)


「近くにいてくれると守りやすい。不便があれば俺に何でも言ってくれ。何でも揃えさせよう」



ルーカスの話はレイラの中でしっかりと辻褄があった。



(一応、私はまだ婚約者。

第二王子として婚約者が事件に巻き込まれては不名誉ですものね。

だから同棲の配慮を……生真面目なルーカス様らしい判断ですわ)



レイラが独自の解釈を勝手に飲み込んでいると、ルーカスはますます視線を逸らしてさらにエヘンと咳払いした。



「隣に暮らしてもらう名目は、その……花嫁修業だが」