文字を追ったレイラの青い瞳からはらはらと涙が舞い落ちた。レイラは震える手でページをめくる。


『寝ている間に勝手に入ってすまない。毎日君の顔を見ないと落ち着かない』


レイラに失望して距離を置かれたと思ったルーカスは、毎夜レイラの部屋に訪れていたのだ。

毎日一文程度。レイラが一日に話せるのと、同じだけ。ルーカスの誠意ある気持ちがまっすぐ示されていた。


『兄が持ってきた縁談は断ってみせる。俺を信じて待ってて欲しい』


レイラが眠っている部屋を訪れ、レイラが返事を書かない交換日記を続けてくれていた。

ルーカスが綴った生真面目な字には全て、レイラを大切に思っている気持ちがこもっていた。


レイラは自分が情けなくこれ以上傷つきたくないばかりに内にこもり、ルーカスが伝えようとしていたことを見逃してしまっていた。


ルーカスは忙しい中でも、懸命に伝えようとしてくれたのに。

完璧にフラれるのが怖くて、死に逃げようとした。なんて甘ったれなのか。


死を選ぶ前に、ルーカスに直接、伝えるべきことがあったはずだ。


(私は、私はいつも……自分のことばかりで、伝えることを、受け取ることさえも怠ってしまって)


レイラはぼろぼろ泣きながら日記をめくり、最後のページにたどり着いた。



『以前、君が婚約破棄したいと言ったのを忘れたわけではないが』


文をなぞり、噴き出した感情と共にレイラが膝から床へと崩れ落ちた。


『俺の隣は生涯、君がいい』

「ッ……ルーカス様」