「レイラ様、お茶飲みます?」


アイザックが何度呼びかけても、無視無視無視の大量生産だ。


「ご気分悪いんでしたら医師を呼びましょうか?」


今のレイラと比較すれば、普段のレイラは、無なりにこちらの声にきちんと反応していたことがよくわかる。


今はただの人形だ。


イエール国からの来賓対応でベルも忙しく、なかなかレイラの元に現れない。


「ね!レイラ様、図書館行きましょう図書館!ウィリアム様が来ないようにしっかり俺が見張りますから!」


困り果てたアイザックはなんとかレイラを引っ張り出して図書館に座らせた。

部屋にいるとアイザックの方が息が詰まる。


レイラがどの本棚を読んでいるかもちろん把握しているアイザックは、どっさり本を持ってきてレイラの前に置いて、適当にページまで開いてあげた。


「ほら!レイラ様、楽しみにしてた魔術の本!途中だったでしょ?読んで読んで」


何でもいいからとにかく何か動いて欲しかった。怖いくらいに動かないので、アイザックはこのまま停止して死ぬのではと怖くなるくらいだ。それくらいレイラは内にこもり切っていた。レイラの死因は刺殺だったはずだ。



(これは……)



婚約破棄命令でどん底のレイラは外界の情報を全て遮断していたつもりだった。だが、アイザックが開いた本の内容が目に映った。


どうしても見逃せない内容だった。