レイラの部屋で、護衛騎士アイザックは困り果てていた。


レイラから全くの無反応しかもらえないのだ。


空気さえも読ませてもらえない濃い無だと、アイザックは感じている。だが、レイラの「無」が常時の侍女たちは静かなレイラの近くで大好きなヒソヒソ話に花を咲かせた。


「ルーカス様、全くいらっしゃらないわね」

「あんなに熱を上げてらっしゃったはずなのに、今ではイーリス国の王女様と」


ラブラブな話も、無様な片思いも、不倫話も大好きな侍女たちは面白がってヒソヒソしている。


「一日中部屋にこもりっきりって言うじゃない」

「あら、いやらしい。レイラ様も清々されてるのではなくて?」

「そうよね。レイラ様はいつも怒っておられたから」

「ちょっとみんな、そういうのは外で話してね?!」


アイザックはニコニコを顔に貼り付けて侍女たちを外へ押し出した。レイラの耳に入るのがわからないのだろうか。


(反応がないからと言って聞いてないわけじゃないのに)