(兄様がレイラを殺すとは思えないが、国の為なら手段を選ばない人であることは知っている)



図書館でレイラに対して『消えてもらうから』というあまりに生々しい言葉が、ウィリアムから出るのを聞いてしまった。


これは無視できない。


過去2回と違う未来をつかみ取るために、ルーカスはウィリアムと全面的に戦う姿勢を取った。ルーカスは上手に立ち回ることなどできない。猪突猛進の直談判を繰り返している。



「まさか従順な弟がこんなにごねるとは思わなかったよ。そんなにレイラ嬢のこと好きなの?」

「はい」

「じゃあさっさと結婚しとけばよかったのに。レイラ嬢もルーカスも初動が遅いんだよ」



ウィリアムは執務椅子に深く座って、紅茶を手にフゥと深い息を吐く。


突然降ってわいた隣国イーリス国の王女との婚約に、ルーカスは大反対だ。だが、縁談を持って外交の旅から帰ってきたウィリアムにも理由がある。



「僕が急に縁談を持ってきた理由を察することはできる?」

「俺への嫌がらせですか?」

「ハハ!それは楽しいね!」