(ベル様が退室されてからずっと交換日記を隅から隅まで読まれていますわ……いたたまれません!!)


レイラを隣に座らせたウィリアムは、じっくり弟の恋日記を読んだ。


人が嫌がることをするのに、これほど才能のあるものも珍しい。日記なんて誰にも読まれたくないものだ。読み終えたウィリアムはパタンと日記を閉じた。

机に頬杖をついて、ウィリアムはにっこりと笑う。


「ルーカスに抱いてもらったことないでしょ?」


隣に座るレイラにグッサリ一刺し即死の言葉である。ウィリアムの事実の追求は止まらない。


「好きとか愛してるとか結婚しようとかも言ってもらったこと、ないんじゃない?」


ウィリアムの言葉の切れ味は抜群で、レイラは致命傷どころかすでに息がないほど真っ白な顔だった。


(わ、私はルーカス様に仲良くしていただいているつもりでしたが……

婚約者としては恥ずべき客観的事実を言い当てられていますわ)


ウィリアムがにこにこ笑うが、レイラは鉄仮面をさらにグレードアップした石像の無顔で黙り込む。


「婚約破棄不可避の噂は本当だね」


満足して交換日記をレイラに突き返したウィリアムは、小さな声でレイラの耳元に話しかける。


「ここのところ、ルーカスと会ってないよね?君に見切りをつけたんだよ。パーティで僕とろくに話せなかった君にね」