ルーカスのエスコートを受けて、王城の大ホールへと足を踏み入れる。煌びやかなホールにいる誰よりもレイラは飛び抜けて美しかった。


レイラとルーカスが歩けば、招待客はさっと道を譲り渡す。


一つのミスもなく入場し、ダンスを踊り切った二人はホールを周回し始める。やっとお声かけ回りますよの合図だ。身分の高い者から順に声をかけるのがルールである。


さっそくルーカスとレイラは大臣夫婦に近寄って行く。


誰から声をかけるかも品の問われるところだが、ルーカスは王太子が回る序列を徹底的に倣うので、批判を買うことがない。ルーカスとレイラが見事な礼をすれば挨拶は終わり、相手方は話すのを許される。


「まぁまぁルーカス様、御機嫌よう。レイラ様もお変わりなく、さらに美しくなられましたわね!素晴らしいダンスでしたわ」

「ルーカス様、最近の治安悪化について聞きたいことがありましてなぁ」

「ッ!」


エイルマー大臣夫婦はおしゃべり好きで陽気な人たちだ。ルーカスが喉に手をやってから口を開こうとする。だがもはや声がでず、部屋にいたときよりも悪化していた。


レイラがレイラなりにぎょっとしてから、ルーカスと重ねた手をきゅっと握る。


(ルーカス様のお役に立たねば。いきますわよ。できますわ。ベル様とアイザックとあんなに何度も練習したのだから)