噴水の縁に二人で並んで腰かけて、明るい月を見上げた。


(私、本当にこんな素晴らしい方の婚約者でいられて、幸せですわ。


ルーカス様はそのままでおっしゃってくださいますが、私はこんな自分は許せません。

お優しいルーカス様の隣で恥ずかしくないようにいっぱい、いっぱい……)


ルーカスが満ち足りた気持ちで月を眺めていると、人差し指がきゅっと握られた。まさか疲れてしまったかとレイラの顔を見ようとすると、レイラの頭が肩にこてんと乗ってきた。


「えぇ?!レイラ?!」


いきなり肩に頭をもたげてきたレイラにあまりに驚いたルーカスは、思わず後ずさり、噴水の縁から尻がずれた。


「うぁ!」


ずれた尻から背中まで噴水に落ち込んで、着水してしまう。ルーカスにこてんと身体を預けていたレイラもそのまま噴水に落ちた。


「わ、あああ!すまない、レイラ!」


レイラを支えることすらできず情けなく噴水に背中から落ちたルーカスの膝の上に、レイラがぐったり墜落した。水にぐっしょり濡れてしまったというのに、レイラは目を瞑ってすーすー寝息を立てている。


「ね、寝てるのか?レイラ?」


ルーカスに肩をもたげたレイラは突如として眠ってしまったようだ。しかし、水に落ち込んでもまだ寝ているとはどういうことだ。ルーカスは慌ててレイラを抱き上げて部屋へと連れ帰った。