明朝、ルーカスは第二王子専用執務室にて公務事務を行っていた。目を通すべき書類、指示を出すべき案件、決済書類など全てをあっという間に処理していく。



(さすがに3度目となると、全部覚えている)



国の王は病床に伏しており、すでに実権は王太子である兄が握っている。王太子は外交に重きを置き、国を留守にしがちだ。昨晩パーティを終えたばかりの王太子はすでに次の予定に繰り出していた。



(兄様はもう出発されたな。一時もじっとしておられない方だ)



兄が留守の間、第二王子のルーカスが国内公務を請け負っている。


愚直なほどの生真面目さに、王太子からの信頼は厚い。実直真面目を形にしたようなルーカスの堅実な公務態度は、王太子並びに、各方面から高い評価を得ていた。


昨晩、婚約者を拉致の勢いで連れ帰ったルーカスは、明け方からド真面目に公務を行っていた。今日は用事があるので先に仕事を終わらせておかなければいけなかった。



(よし、これでいい)