赤い日記帳を携えたルーカスが、仕事を終えてレイラの部屋を訪ねた。


いつものように扉を開けて迎えてくれたレイラに、ルーカスは手を差し出した。レイラが条件反射の雅やかな所作で迷いなくルーカスの手に手を重ねた。



「レイラ、月が綺麗だから散歩に行かないか。今日はもう寒くない」

(もちろん行きたいですわ!)



交換日記に薔薇園が綺麗だったと書かれていたので、ルーカスが気を利かせて散歩に誘ったのだ。


レイラがしばらくじっとルーカスの顔を見つめている間、ルーカスはレイラの顔をじっくり観察する。眉尻が2ミリだけ下がった。これはレイラの笑顔だ。


ルーカスはレイラの表情を読み取ることが如実にうまくなっていた。それはそれは気持ち悪いほどに精巧に読み取る。ルーカスにかできない芸当となっていた。


もちろん散歩に行きたくて一歩踏み出したレイラの前に、なぜかルーカスが立ちふさがった。ルーカスはもう一度まじまじと顔を覗き込んだ。レイラが予想外の距離に一歩引きさがる。


「顔色がよくないように思うが」