日記を読みこんだルーカスは王太子である兄からのパーティ招待状を手に取った。長期で国を留守にしていた王太子が帰って来る。パーティ好きの兄が主役の絶対参加行事だ。前回は聖なる夜のパーティだった。


(レイラが俺にこんなにたくさん気持ちを見せてくれるのは、初めてだな)


招待状を手でパタパタと揺らしたルーカスは、交換日記に綴られるレイラの緊張と不安を何度も読み返した。


過去2度、同じパーティにレイラと出席している。いつも涼しい顔でこなしていたように見えた彼女の中身はこんなに不安だらけだったのかと今更知った。


今までそんな素振りを少しも見せずに、気丈に隣に立ってくれていたのかと思うとレイラへの愛しさがこみ上げてくる。


だが今回は彼女の不安を受けとめて、彼女の隣を歩くことができる。


(口が重いレイラにとってパーティは、大行事だ。俺がしっかりしないと)


ルーカスはしっかりした字で「無理はしなくていい」と、交換日記の返事を書きこんだ。レイラのことも心配ではあるが、ルーカスは兄との久々の邂逅が特に憂鬱だった。


「またあの話を持って来られる時期だな。なんとか止められないものか」


過去2度繰り返した時間の中で、兄は迷惑なことしかしない。