執務室にて仕事中のルーカスは眉をひそめていた。


(犯罪件数の増加が著しい。レイラの家に強盗が入ってしまうくらいだ。これは毎回疑問だな)


国内犯罪の報告書に目を通すルーカスは、首を傾げる。時間を繰り返した知識を使って対策を講じてもイマイチ成果が上がらない。


国内で何か大きな政策が動いたわけでもなく、経済が揺るぐ様子もない。


市民が犯罪に走る動機が見えないのだ。だが、異常なほどの犯罪件数が報告されている。


(治安悪化の原因は調べているが特に何も見つからない。何か他の理由が)


治安維持に努めるように対策を立てたルーカスは、引き続き調査を継続するように指示する。


レイラが関わると途端にポンコツな第二王子であるが、誠実な人柄と実直真面目なルーカスの仕事の評判はとても良い。


「殿下、休憩を」

「ああ」


側近の老人が休憩を促す。伸びをしたルーカスの目に、机の端に置いた赤い交換日記が映る。

休憩がてらレイラとの交換日記をパラパラとめくっては、思わずニヤけてしまう。


(ホッホ、殿下はお若いですなぁ)


ルーカスの様子を横目で見る老人はほっこりしてから、休憩を取るために執務室を出た。