アイザックは退室し、レイラの部屋へと向かった。レイラの後ろで立っているのがアイザックの基本的な仕事だ。


「レイラ様、失礼します」


アイザックが部屋に入室すると、恋文を書くベルの隣でレイラは本を捲っていた。アイザックが椅子に座っているレイラの隣に立つと、レイラが伏していた瞳を悠然と持ち上げる。


「ルーカス様から贈り物頂きました。ありがとうございます!」

(妹さんに喜んでいただけるといいのだけれど)


今日も絵画並みに動かない表情でレイラがコクリと一つ頷く。アイザックは万人に好感をもたらす笑顔で、無のレイラに笑いかけた。


「俺のこと、疑わせてしまったみたいで申し訳ありません」

(え?!犯人かと疑ってしまったことをルーカス様はお話になったのかしら?!)


あのトンデも尾行が大成功したと思っているレイラは驚いて両眉が天井まで跳び上がった、と思ったが美しい眉は停止したままだ。アイザックはレイラの無反応を気にせず話し続ける。コミュ強。


「俺、愛想よくしてるつもりだったので、レイラ様と関係築けてると思ってました」

(たしかにアイザックを疑ったのは私にはない能力が凄すぎただけで……アイザックは何も悪くないのだけれど)

「まさか俺が疑われるなんて、正直ビックリです」


ベルは恋文を書く手を止め、テーブルに肘をついて二人の成り行きを見ていた。アイザックは頭の後ろを手でかいて、にへっと締まりなく笑う。


「勝手に俺は味方だって伝わってるだろうって慢心してました。

やっぱり、伝えなきゃ、伝わらないですよね」