ルーカスの執務室に呼び出されたアイザックは、薄茶色の瞳をぱちくりさせていた。


「これはなんだ、その賞与だ」

「この前のまるわかり尾行のお詫びってことですかね?」

「……そういうことだ」

「レイラ様は当然ですけど、ルーカス様も尾行は部下にやらせた方がいいですよ。下手です」


ルーカスから手渡されたのは一冊の日記帳と、羽ペンにインク、薄い桃色の便せんだった。アイザックはすぐに妹への贈り物だと察した。コミュ強の察し力は激高である。


「心遣い感謝します。妹も喜びます」


アイザックはただお金をもらうよりも心遣いが感じられる贈り物に快活に笑った。


「レイラからだ」

「お優しいですね、レイラ様」

「そうだな、素敵な女性だ」


ルーカスの机の上に明らかに公務文書ではない赤い交換日記が置かれていて、またアイザックの鼻が利いた。


「交換日記、調子はどうですか?」

「お前は何でも知ってるな」


お二人ってわかりやす過ぎますよ。ってか告白してないってマジですか?男の勲章ついてます?までアイザックは言いたかったが口を噤んだ。絶妙に余計なことを言わないスキルがコミュ強である。