ルーカスも予想外の場所に首を傾げる。


救護院は重篤な病気や怪我を負った患者を治療し、場合により入院する施設だ。医師や看護をする世話人が常駐している。


だが、治療費も入院費も高くて市民が気軽に利用できる場所ではない。


アイザックの本来の身分は市民だ。アイザックが持つ騎士の身分はルーカスに軍事奉仕をする見返りに授与された特別な身分である。


レイラはルーカスに連れられ、アイザックが入室した入院部屋をこっそり二人で覗いた。

ベッドには一人の少女が座っていた。


「シリル、調子はどう?」

「うん、良い感じ!お兄ちゃん騎士服かっこいい!」

「そうだろ?シリルに見てもらおうと思って着て来た」

「似合う似合う!」


ベッドの傍らに座ったアイザックが、細くて今にも折れそうな少女の頭を撫でて笑う。はにかんだ少女は時間を惜しむように次から次へと言葉を忙しく発した。