アイザックが非番の日、ルーカスはアイザックの日常調査を実施した。いわゆる尾行である。


ルーカスは王城の城下町にある集合住宅の一室の扉を見守っていた。アイザックが一人で借りている部屋だ。ルーカスはアイザックの雇用主なので家の場所ぐらい知っている。


ルーカス自身の眼でアイザックの真の姿を暴きたかった。だが、なぜかレイラもセットである。


ルーカスにエスコートで手を引かれたレイラは、顔には出ないが誰よりも張り切っていた。


(犯人捜しをするってルーカス様とお約束しましたもの!お役に立ちますわ!)


アイザックが怪しいとなったあの夜、レイラは無表情で右手を高らかと上げ続けた。


『私も尾行、やりたいです』


紙に書かれたお手本のように美しい字にはレイラの意思が宿っていた。


「あ、遊びじゃないんだレイラ、危険がある。俺が一人で行くから」


首を振ったレイラの瞬きがいつもより若干だけ多かったのをルーカスは見つけてしまった。レイラの顔に微量のワクワクが出たのだ。

レイラの顔さえまともに見られなかった今までではきっと見逃していた。