私のお兄ちゃん season1

翌日玲蘭が登校すると、広本よもぎ、西崎もみじ、北原ふたばと共に、さくらが話しかけてきた。


「おはよー!玲蘭!」

「おはよう。みんな。」

「今日、一時間目のホームルームは席替えだね。」

「あーそうだった。」

「間違ってもあの3人、いや4人の前後左右にはなりたくないものよね。」


さくらがまた伊織や楓を見ながら話している。


玲蘭は苦笑いする。



「でも確率でいうと、かなりの確率よね。35人中4人いると。」



もみじが言うと、その場にいる皆んなで頷く。
玲蘭だけは苦笑いを続けている。


「猿林くんはまだマシなんだけどね。授業中は寝てるだけだし。逢沢さんなんて有澤さんや入江さんと騒いだりするし。マジ煩いよ。」

「よもぎ今、逢沢さんたちの隣だもんね。うちも斜め前の加賀美くんはすぐ先生に反抗するし、やっと離れられるかも、と思ったら肩の荷が降りるよ。」

「でも4人のうち誰かとは隣になるよね。本当この時期の席替えは重要なのに絶望しかない。」



グループの子たちが、みんなこんな調子だから、伊織とは家族になってしまうこと、玲蘭は言えるはずなかった。


どう切り出すか、悩ましい。


一方で伊織は自分の席で雑誌を読み耽っていた。


「いーおり!おはよー!」


さりなが抱きついてきた。
伊織は嫌な顔をして、振り払う。


「人前でやめろって。」


さりなは伊織の態度に顔をしかめる。


「まぁまぁ、さりな。やめとけよ、伊織は他人の前でベタベタするタイプじゃないだろ?」


伊織の前の席の猿林洋一さるばやしよういちがフォローする。
すると楓もやってきた。


「いいなー俺も彼女欲しーわ。できたら雨宮さんみたいな。」


「おまえが全校生徒の憧れ、雨宮と付き合えるなんて確率0に限りなくちけーわ!」


「洋!ひでーじゃん。」

「事実ですが、何か。」

「とりあえず今日席替えじゃん?雨宮さんと隣になりたいなー。」

「あっちはなりたくないと思うぜ?」

「なんだとー!」


洋一と楓が騒ぐ中、さりなは伊織を見つめていた。


心の中の声が溢れそうだった。



(人のいないとこでも、しないくせに.......。)