校長室がある2階に着く。
…っ
「これ…」
「…うっ」
「くっさ」
校長室の目の前の階段を降りきった瞬間、えげつない血の匂いが鼻を煽った。
校長室の前の廊下が水に濡れている。
「まさか…」
片桐が足を止める。
枕崎が鼻を手で覆う。
…やっぱりそうか。
誰も行こうとしないので僕が先陣を切って扉に近づき、容赦なく全開にした。
「っ!」
ブワッと広がる血と水のしけった匂い。
校長室の床はカーペットみたいになっているので色は変色し、ふやけている。
水浸しの校長室。
その水は奥に行くにつれ赤く濁っている。
「うっ…おえっ」
片桐がえづき、口を押さえて逃げ去る。
枕崎が白い顔をして凝視しているその先には…
大本と思われるガタイのいい体が倒れていた。
しかし頭がない。
首から永遠と血が流れ続けている。
…そして少し離れたところに落ちていたのは、恐怖に歪む大本の頭だった。
…校長室に水を溜めようとしたのか。
どこから引っ張ってきたのか、ホースで水が入り続けている。
しかし水は泳げるほどは溜まらず、外に逃げていったのだろう。
血の海の向こう側。
大本の頭の近く、校長机にスマホが置いてある。
僕は鼻を吸わないよう口で呼吸して、血だらけの校長室に踏み入れた。
ジュシと、水を含んだカーペットの嫌な感触。
「…ひかる」
枕崎の止めようとする声が力無く背中にかかる。
それを無視して進み、大本の首の断面図を見ないようにスマホを手に取った。
そして血の海を引き返してくる。
やめた方がいいとわかっていながら、目が大本の頭にむいてしまう。
「…」
その目は…偶然だろうか。
僕を捉えていた気がした。
キモいなと思いながらそれを横目で見据えた。
大本…実験はどうだった?
やっぱりダメだったんだろう?
ご愁傷様。
そして真っ直ぐ校長室を出た。
「……ひか、る」
枕崎が信じられないという顔で僕を見ている。
「今更だよ」
こうなることはわかってたんだ。
僕は大本を煽るようなことを言ってしまったんだしこれくらいの責任は取らないと。
大本のスマホを開くと見慣れた画面が立ち上がっていた。

