教室に着くとみんな真っ青な顔をして静かに席に座っていた。

すすり泣く声や嗚咽がたびたび聞こえる。
お通夜状態だね。
まあ仕方ないけど。


自分の席に座って意味もなくため息つく。
…そういや今朝は祐樹が来なかったな。
いつも朝一緒なのに…
大丈夫かな。
ちゃんと返したかな。

他のクラスメイトも揃わない人の席を見る目が不安の色をしている。


着々と教室に人が増えていく。

と、昨日はいなかった渡辺が入ってきた。
「はなっ」
牧原が席を立って心配そうに駆け寄った。
「よかった…顔見ないと不安だよ」

牧原は一軍様だけどクラスみんなと仲の良い優しい人だ。優しすぎて心配になるくらい。

「ごめん、本当は昨日も行こうと思ったんだけど親がうるさくて…今日は無理やり来た」
うん、無理矢理でも来た方がいい。


同様に、昨日はいなかった宇佐美も来る。
「翔」
よしきが安心したような声を出した。
「大丈夫か?」

宇佐美は一番仲の良かった野々村が死んで精神的に辛かったのだろう。
酷くやつれているように感じる。

「…昨日はどうなったの」
「実行できた。梅原さんは無事」
梅原が宇佐美を見て少し頭を下げた。
「…従えば死なないってことか」
「ああ」
「…」
宇佐美は野々村の空席をじっと見ていた。


少しして柳谷と東坡も来た。
遅れて祐樹も入ってくる。僕と目を合わせて作ったように笑った。よかった…返信してた。
山野と枕崎も来て
片桐も柿田も…

いないのは檜山だけ。それ以外は…全員来た。


ほとんどのクラスメイトが返信して、学校に来た。
わざわざこのゲームのお題を実行するためだけに
不安定な心境下で登校した。

30人近くいる生徒が。
普段だったらこんなに心を揃えることがない現代の若者達が、自分の命惜しさにおとなしく主犯に従う。

恐怖がそうさせる。
強制的にそう、させるんだ。


ほーんと賢いね。
人間の嫌なところをよく知ってるね。



「ひかる、ひかるってば」

「あぁ祐樹」
いつの間にか近くに来ていた祐樹が僕の顔を覗き込んでいた。

「どうしたんだよ、気持ち悪い顔して」
え、失礼なんだけど。
「どんな顔してた?」
「微妙に笑ってた」
え、何それきも。

「大丈夫か?」
「あ、うん。みんな来てよかったなって思って」
「そうだな…返信しなきゃ死ぬんだもんな。いやでもするよ」
「…そう、だね」