「…あの…毒じゃない可能性もあります」
え?
久遠さんが小さく手を挙げた。
なんで君が…
「私…心当たりがあるんです。枕崎さんがおっしゃったように私が転校した日からこのゲームが始まりました。だから私自身の今までの生活の中で、何かこのゲームに巻き込まれる理由を探してみたんです」
…え?
心当たりって…どういうこと?
「私…というか、私の兄なんですけど」
兄?
「私の兄は父の会社で心理学の研究をしているんです。主に催眠に似たような状態に陥る『思い込み』についてです」
思い込み…
「…人間は心からの影響というものを体に大きく反映させることができるらしいんです。よく見る催眠術もその一種です。心に自分はこうなるんだと言い聞かせることで、脳がそれを受けて身体にも影響を与える」
催眠術か…
「えと、例を出すとこんな実験の話があって…
ある男が拷問されます。その際に捕まっている男に熱々の火で炙った鉄の棒を見せ、今からこれをお前にあてるぞって言うんです。
男は熱々の鉄の棒が体に当てられると思い込みます。
そしてその後男に目隠しをして拷問が始まります。でも実際に男に当てるのは火で炙っていない、ただの常温の鉄の棒。触っても火傷はしません。
しかしそれを男に当てた時、男は熱い熱いと叫び、当てられた場所に…火傷をした」
「熱くない鉄の棒で火傷したってこと?」
「はい。熱いと思い込み、脳が確実に熱い棒を当てられると信じていたから、全くその作用のないものでも火傷ができたんです。これが『思い込み』です」
思い込みで…怪我ができるってことか。

