「もちろんあくまで予想だから、変に疑って追い討ちかけたりはしないでくれ」
枕崎が念を押すように言った。
「それより今は今日の内容の方を考えよう」
うん、だよね。
おそいよ。
梅原の表情が時間を増すたびに悪くなってるから。
ごめんフォローできなくて。
「梅原が今日中に殴るってことだけど…今回の内容はちゃんとやろう。ちゃんと内容を全うすれば死なない。それは佐滝が証明してくれてる」
片桐が枕崎に変わって話し出す。
ああ、そうだった。
忘れてた。
佐滝もなんかあったな。
「佐滝。あの時メッセージ来たりしたか?」
「あ、ああ…バスケやり始めたくらいに来てた…確かクリアって書いてあったはず。
あと…昨日ひかるが言ってた縦に並んだ数字」
裕樹も言ってた通りだ。
もしあの時佐滝がバスケをやってなかったら…
「じゃあそのメッセージがこれば…クリアできるってことだね」
つまり今回も学校にいるうちに梅原が誰かを殴ればいいんだ。
「梅原、僕を殴りなよ」
さっさと終わらせたかったから自ら名乗り出た。
「こんな変な緊張なくそう」
「新田くん…」
「それにRINEが来たら確認したいこともあるから早めに」
「う、うん」
「ちゃんと殴ってよ。もし殴ったと認識されなかった時、よっぽど大丈夫だと思いたいけど失敗とみなされてゲームオーバーになったりしたら怖いから」
「え……」
あ、脅すようなこと言っちゃったかな。
「ま、とりあえず拳で遠慮せずに。あ、別にそういう趣味があるわけじゃないからね」
場を和ませようとしてジョークを言ったつもりだったけど誰一人顔を緩ませることはなかった。
すごい滑ったみたいで恥ずかしい。
梅原は少し躊躇ったが意を決したように僕を見た。
「い、行かせてもらいます」
「はい」
僕の頬に狙いを定めて一呼吸置くと
グッと目を瞑ったまま手を振り上げた。
バコッ!!
っ…
思ったよりいい音がなった。
…いてて…
女の子でもやっぱぐーパンはきついな。
クラスが少しざわつく。
「ひかる大丈夫か」
祐樹がふらついた僕の体を受け止めてくれる。
「心配なのは僕より梅原だよ」
ヒリヒリする頬をさすりながら通知音を待つ。
さて…
梅原は不安と罪悪感とであり得ないくらい目が泳いでいる。
クラスも気味が悪いほど静かだ。
来てくれよ。
…
…
ピロン!
通知音、
クラスがざわつく。
梅原が何か言う前にスマホをとった。
「貸して」
勝手に画面が立ち上がる。縦に並んだ数字。
四箇所にばつ印がついている
13の瀬尾、14の多田、23の野々村、20の中谷だ。
そして目立つ太字で書かれたCLEARの文字。
よし。
「クリアだよ」
僕の言葉にクラスの緊張がふっと溶けた。
安堵の息の音や、歓声が上がる。
「よ、よかった」
梅原が崩れ落ちて座り込む。
「じゃあやっぱり、この内容に従い続ければ死なずに済むってこと?」
三谷が柿田の服を掴んで言った。
「この先指名されても頑張ってクリアすれば生き残れるんだ」
よしきがわずかな希望に表情を緩ませる。
「よかった…よかった!」
片桐がほっと息をつく。
クラスに安心が広がる。
自分が指名されれば死ぬかもしれないという恐怖がわずかではあるが遠のいた。

