野々村と檜山杉山が騒いでいるのを横目にスマホを見る。
んーやっぱりイタズラにしたらよく出来すぎている気がする…

決まった時間にこのクラスだけに送信し、夜は他の操作ができなくなる。
いわば強制的に返信させている。

一体何なんだ『8』って。
このメッセージを送る目的は何?


頭いい人ならわかるかな。
ちらっとここから一番遠い席に座っている枕崎を見た。スマホを見ているものの何を考えているかはわからない。
…え、まつ毛なっが。えぐいなあれ。あの長さだと視界に入らないのかな。

あと頭がいいと言ったら…片桐かな?
片桐龍斗
このクラスの頼れる学級委員長。
気さくで優しいし、賢いし、頼りになる。
リーダーシップのあるお山の大将って感じ。
確か成績は枕崎の次によかったはず。


僕は隣の席に座る片桐に声をかける。

「ねー片桐」
「ん?どしたひかる」
「このRINEなんだと思う?」
僕の問いに対して少し首を傾げた。
「んーよくわからないけど俺はただのイタズラだと思うな。わからないけどな?」
わからないと念を押された。

そりゃそうか。いくら頭が良くてもこんなワケわかめなRINEの正体なんてわからないよね。
…でも昨日の多田のスマホ画面を思い出すと…ちょっとね。

あの後考えたけど…ばつ印がついてたのは13と14。
そして昨日は瀬尾と多田が休みだった。
瀬尾は出席番号13番。多田は14番…
これは…偶然なのかなって…


「まあ気にするほどのことでもないと思うけど」
片桐がサラリと言う。
「…だよねー」
「ああ」
「変なこと聞いてごめんよ」
「気にすんな」
片桐はからりと笑った。

「野々村はやるのかな」
「んーもしこれが続くんであれば、今後も無理な内容に従おうとする流れになるかもしれない。やめておいた方が今後のためだとは思うけど」
んーまあ野々村がしけると分かっていながらやらないような人ではなさそうだけどね。


「どうするんでしょうか」
久遠さんが心配そうに言った。
「気にすることないよ」
「はい…」


まあ騒がしい連中以外は気にもとめてないし。
騒がずスマホを見ているだけのおとなしいクラスメイトもいる。

小塚みちるや成川智なんかはメッセージを軽く確認しただけですぐに各々の作業に戻っていく。
彼らは男子の中でも特におとなしい生徒だ。
僕もあんまり喋ったことないな。

女子もそんなような人が数人いる。
夢中になってるのは一部だけだし…放っておけばいいか。



「おーい、お前らいつまで騒いでる!さっさと携帯しまえよー」
いつの間にか担任が入ってきた。
「あれ?また多田と瀬尾は休みか?珍しいな。昨日も今日も何の連絡もないんだが、誰か知ってるやついるかー?」
誰も意思表示を見せない

…今日も休みか。
2人とも…

「うーん。後で連絡するか。じゃ、SHRを始める」

僕の頭をよぎるのは昨日見た多田のスマホの画面。




今日も普通の1日が始まる…はずだった。