いつどこで誰が何をした



「宇佐美」
荒れ狂うクラスメイトの名前を呼ぶ。
ピタリと柿田に歩み寄る足を止めた宇佐美。
柿田の目が僕を捉える。

「ひかる…」
「ひかるくん!」
2人が同時に言った。
柿田がそれと同時に僕に向かって走り出す。
宇佐美が追うことなくただ呆然と僕を見ていたのは幸いだ。柿田が無事にこちらに近づき、僕に向かって手を伸ばす。
その手を掴んで自分の後ろに引っ張る。

「ひかるくん…ひかるくんっ」
柿田が僕の後ろの服を掴んで泣き声を出す。
「柿田下がってて。花里っ」
「玲子ちゃん!こっち!」
花里が柿田の腕を取って下がっていく。
「でもっ…ひかるくんが!」
「大丈夫、ひかるくんは絶対に大丈夫だから」
僕の背中にそう言う。まるで言い聞かせるように。



「…ひかる」
「宇佐美。派手にやってるみたいだね」
向かい合って立つ。ゆらりとこちらを見た宇佐美がくるっとナイフを持ち替えた。

「…お前から来てくれるなんて嬉しいな。俺が一番殺したかったのはひかるだから」
「宇佐美は僕が犯人だと思ってるんだ」
「まあな…だってお前頭ぶっ飛んでじゃん。このくらい普通にやりそうだし」
ふつうね。

「心外だな。僕がこんな低レベルの未完成なゲームを運営してるとでも?舐められたもんだね」
「ははっやっぱお前狂ってるわ。殺し甲斐がある」
ナイフをこちらに向ける。


「まあ落ち着けよ宇佐美。犯人を殺したいんだろ。数打ちゃ当たる戦法なんて馬鹿のやること、効率が悪い。“片桐”って呼ぼうか?」
「…なるほど。やっぱり片桐を殺したのはお前か」
「不可抗力だよ」
ジリジリと近づいてくる宇佐美。

宇佐美は狂いきってはいない。まだ僕を警戒しているし動揺もしてる。やたらめったらナイフを振り回すことはなさそうだ。

「お前が犯人じゃなかったとしても…生かしておくのは危険すぎる。お前は躊躇いなく人を殺す。
…あの日、躊躇いなく圭のスマホを血みどろの中に取りに行けたんだから…」
「僕がいなければ今頃みんな死んでた」
「…中村の言う通り…いっそその方がよかったのかもしれない」

馬鹿なことを。
さっき自分で言ってたじゃん。死ぬのは怖いって。自分が死ぬくらいならクラスメイトを殺すって…
この数分で矛盾すんのやめてくんない?そのアホさ加減に頭痛くなるから。


「宇佐美が刺したのはよしきと牧村だけ?」
いつも通りの声色で聞く。
僕に出会う前に、他に誰を手にかけた?
返答によってはちょっと怒るけど。

「……教室ではその2人。それから…さっき2階で東坡達に会ったんだよ」

「東坡相手には戦いたくなかったから転校生を狙ったんだが…」
っ久遠さん…

「残念ながら成川が邪魔しやがった」

「だから成川を刺してあいつらを巻いた。刺したのはその3人」
成川…


後ろで花里が息を呑む。チラリと横目に振り向くと、柳谷も目を丸くしていた。
…刺された箇所によってはまだ助かるかもしれない…。東坡達がついてる。見殺しにはしないはずだ。
今はあいつらを信じよう。僕は…ここで冷静さを失うな。

大丈夫。成川は死なない。