「…待って」
花里が手をかざした。
しばらく3階を練り歩いた頃、人の気配はないと思っていた矢先、西の階段付近で誰かの声が聞こえた。
何やら言い争っている。
それに気づいた花里が僕らを止めた。
「…誰かいる」
そうだろうよ。声聞こえるもん。
「…玲子ちゃんの声だ」
柿田?
花里が少し青ざめる。
「…ひかるくん、行こう」
「うん」
「僕より前に行かないでね」
4人で音を立てないよう、ジリジリと声のする方へ進む。
階段に近づくにつれ言葉がはっきり聞こえるようになる。階段の上でやり合ってんのかな。
「…しっかりしてよ翔くん!もうクリアしたんでしょ!だったらもう刺す必要ないじゃない!」
柿田の声だ。宇佐美がいるんだな。
「気づいたんだよ…柿田。このゲームを終わらせる方法。全員殺せばいいんだ…そうすれば必ず犯人も死ぬ。ゲームが終わる…もうそれしかないんだ」
タガが外れたか宇佐美。
「…圭が死んで、俺もいつ死んでもいいやと思ってた…。でも…やっぱ死ぬのは嫌だ…自分が死ぬくらいなら、クラスメイトを殺してでも俺は生き残る」
「馬鹿なこと言わないで!私は犯人じゃない!殺したって意味ないわよ!」
「そんなこと…殺してみないとわからないだろ」
まずいな、柿田がやられる。
花里が冷や汗を流す。
柿田と花里は一軍の仲間同士だ。僕のグループに来たからと言って柿田を見捨てたわけじゃない。
グッと拳を握る花里。
「花里」
「…っ」
「感情に任せて突っ込むと犬死にする。ここは僕に任せて。必ず柿田は助けるから」
「…ひかるくん…」
「ごめん、前に出るよ」
前には行くなと言われていたが、僕はこのグループのリーダーだ。リーダーが前に出ず傍観してるなんてダサい。
それに、花里より僕の方が役に立つ。
花里の肩に手をかけて前に出る。
ゆっくり階段に近づいていくと、踊り場の隅に追い詰められた柿田と、その前でサバイバルナイフを手に猫背で立っている宇佐美の背中が見えた。
さて…試してみよう。
これが上手くいけば僕はまた一歩…いや、何歩も勝利に近づく。

