「………」
山野が腕の中で動かなくなった枕崎を震えながら見ている。
…呆気ない。あまりにも呆気ない。
彼は生きていたら、きっと何か大きな事を成し遂げたであろう人間だった。
様々な可能性を秘めていた優秀な人だった。
だが…死ぬ時は、花が枯れるよりも呆気ない。
死んでしまえば、雑草よりも価値がない。
既にあれは……屍にすぎない。
枕崎は常に僕の味方でいてくれた。
支えてくれた確かな仲間だった。
だが…もはや過去の話。
呆気ないな、呆気ないなぁ。
もったいないなぁ。
まあ、今更嘆いたところで仕方ないけど。
彼は自分で選んだんだ。
だったら僕は、もう何も言わない。
あとは山野が立ち直れるかどうかだな。
正直、山野が死ななかったことに少し安堵している。
僕が目指すのは勝利。
枕崎ができなかった『勝つ』こと。
そのために…山野、君が必要だ。
さっさと立ち直ってくれ。
そんな屍に、後ろ髪を引かれるな。
山野はそっと枕崎を地面に下ろす。
手を離してゆっくりと立ち上がる。
「……」
振り返った山野の目はまだ赤く、泣いた痕跡が残っている。
しかしその瞳の持つ光は、決して消えてはいなかった。
…流石だよ山野。そうでなきゃ。
枕崎の惚れた人間なだけある。
よかったよ。中村みたいに喚いたりはしないんだね。賢い判断だ。
「山野」
柳谷がいつも通り声をかけた。
「…私、もう少し頑張る。必ず犯人に…勝つ」
「…おう」
柳谷がゆっくり山野に近づき、手を差し出す。
「必ず勝とう」
「…うん」
山野は柳谷の手を掴まず、パンっと音を立てて力強く叩いた。
「ひかる」
山野の透き通る声が僕を呼ぶ。
「私のこと、存分に利用して」
……
「ああ。遠慮なく」
僕が祐樹を失ったように、彼女は枕崎を失った。
僕達は少し似ている。
いや……そんなことないか。
似てるなんて言ったら山野に失礼だ。
「戻ろう。柿田達と合流しよう」
……さようなら。枕崎。

