「…何馬鹿なこと言ってるの柳谷。枕崎の次はあんたかもしれないんだよ」
山野が普段より感情を露わにした声で言った。
「だったら1日でも枕崎と柳谷が生きていられるように、死を先送りにするべきだと思う」
…それもまた一理ある。
柳谷の言ったことが正解ではない。
枕崎と柳谷は犯人にとっては同列に危険人物。
確実に潰していくつもりだろう。
1日でも先送りにできれば、その間に犯人に辿り着けるかもしれない。
だから2人は守るべきだ。
だが山野も必要。
「言っておくけど私にそんな価値はない。私だって普通の高校生。柳谷が私に何を期待してるのかはわからないけど…私だって今すぐにでも逃げ出したいくらい限界が来てる。役に立って死ねるなら、今がいい」
……。
山野が息を詰まらせた声を出す。
「ねぇちゃんと考えてみて。今までこのゲームに貢献してきたのは私じゃなくて枕崎。さっき言ってたじゃん。もう答えはすぐそこまで来てるんでしょ?だったら使えるものは全部使って万全の状態で犯人に挑みなさいよ。攻撃は最大の防御。私に攻撃はできない。それどころか…私は戦場に立てる足すら持ってないの。今すぐ逃げ出したいの」
攻撃は最大の防御か…
「…本音を言うとね」
山野が深い声で呟く。
ゆっくり枕崎を見る。
その瞳から、一雫の涙が溢れる。
「……もう、嫌なの…怖いの。心のどこかで…死ねば解放されるなら……それでもいいと思ってるの」
「…っ」
「枕崎が目の前で死んだら…もう…冷静を取り繕うこともできなくなる。だったら…枕崎が解放してよ。私を…殺して」
………
今までにないほど、空間が静寂に包まれた。
きっとそれは、山野の本音に同意する人が少なくなかったからだ。
久遠さんが俯く。花里がゆっくり僕を見る。東坡が力無く椅子に座る。
柳谷も…もう何も言わなかった。
枕崎がひどく悲しい顔をした。
ぎりっと歯を食いしばり、震える手を山野に近づける。
山野のサラサラの髪を耳にかけ、そのまま撫でるように背中に回し、静かに抱きしめる。
「………わかった」

