「山野」
と、彼女の名前を呼んだのは枕崎ではなく、柳谷。
「犠牲になるつもりだろ」
そう鋭く切り込んだ。
やっぱりそうだよね…僕もそう思った。
そして多分、枕崎も彼女の意思を分かっていた。
頑なに山野の方を見ようとしない。
そらそうだ。彼は山野を愛している。
山野が枕崎を死なせたくないように、彼も山野を死なせたくないはずだ。
「だったら何?分かってるでしょ。このゲームに勝つためには枕崎が必要。ここで枕崎を失えば、私達プレイヤー側の大きな損失になる」
……分かってるよ。その通りだ。
「枕崎を生かすためには誰かが犠牲にならなきゃいけない。だったらその役、私にやらせてよ。だって私、枕崎好きだもん」
そう当然のように言った山野。
枕崎が俯いたまま目を開いている。ぐっと唇を噛み、視線を泳がせる。
彼女は本当にかっこいい人だ。あの枕崎が惚れた女だと誰もが納得できるほどに、強く美しい。
「……山野」
枕崎が震える声で名前を呼んだ。
「そんなことして俺が喜ぶとでも…?俺だってお前が好きだ。いや、お前が俺を好きな以上に俺はお前が好きだ。好きな女が自分のために死んでのうのうと生きていられるほど、俺は強くない」
枕崎がやっと山野の顔を見る。
立ち上がり、2人が向き合う。
「別に私は枕崎を喜ばせたいわけじゃない。私が死んだらあんたが一番悲しんでくれるって思ってる。でも枕崎のために命をかける人は…私でありたい」
山野が優しく笑う。息を呑むほど美しく。
「……嫌だ。目の前で死なれたくない」
「それは私も同じ。枕崎は男なんだから耐えてよ」
「無理に決まってんだろ。俺のほうがお前のこと好きなんだぞ」
「なによそれ」
お互いに想いを告げあっているはずなのに、こんなに静かでクールなことあるのかな。
不思議な光景だ。
「頭良いんでしょ?だったらわかるでしょ。枕崎にどれだけ価値があるかってことも、一緒に生き抜こうなんて生ぬるいこと言えない状況だってことも」
「俺のことなんだと思ってんの?俺だって普通の高校生だよ。嫌なもんは嫌。お前にだけは死なれたくない」
「いい加減にして」
「いい加減にしろ」
2人が睨み合う。山野の目は微かに潤んでいる。
……わからない。
どうするべきだ。
どちらを取るべきだ。
確かに枕崎を失うのはキツい。だが…山野も同じだ。
彼女の損失も確実にこちら側のダメージになる。

