いつどこで誰が何をした



「……今から私が言うことをよく聞くんだ」
声色が変わる。
他のみんなには聞こえないよう、作業しながら僕の耳元で低い声を出す。


「犯人は自分の身体にもMo153を入れている」

っ!
なっ

「静かに。挙動を落ち着かせて何も聞いてない顔をして」
…どういうことだ。
なんであんたがそんなこと知ってる。何故僕に言う。


「数がズレてる。Mo153は犯人も含めて34個ないとおかしい。だが実際に使われたのは33個。つまり、犯人でない人間で、Mo153を体内に入れていない人がいる」
「……」
…なるほど。
あの日注射を受けなかった人がいるってことか。
偶然か…それとも共犯か。

「犯人は一人、共犯者はいない。注射を受けなかった人間がいたのは犯人にとって想定外のことだ。おそらく家か個人の事情で受けられなかったんだろう」
僕の心を読んだかのように応える。
だからなんでそんなこと知ってる?
まあ…聞いても教えてくれないだろうけど。


綾人さんの正体については置いておいて…
共犯者がいないってことは、綾人さんの言う通りそいつは偶然免れたということ。
しかしMo153の支配から免れた人間を、犯人が野放しにしておくはずがない。

僕の予想が正しければ…おそらくそいつは既に死んでいる。Mo153ではない方法で犯人によって殺されているだろう。そう考えると返信せずに死んだと思われてる人の可能性が高い。

そのうちで片桐の手にかからなかった人間…
つまり、多田、瀬尾、中谷、中村の誰か。
中村は多分違う。多田も梅原から心臓発作だと聞いた。瀬尾か中谷のどちらかか…。
まあ誰かはそんなに重要ではない。注射を受けなかった人間については調べればすぐにわかることだ。


問題は…もし予想通り注射を受けなかった人間が既に死んでいるとすれば…
現段階でMo153が17個作動しているという話が矛盾してくる。

つまり
Mo153は全部で33個。死んだのは17人。作動したMo153は17個。

これなら一見問題はない。だが17人のうち1人にはMo153が使われていない。その一人を除外して、Mo153によって死んだ人間のみで考えると…


Mo153は全部で33個。死んだのは16人。作動したMo153の数は…17個。

……ひとつ…多く作動している…。