「ひかるくん」
げ…
小塚の顔を覗き込んでいた僕の背後から声がかかる。
聞き覚えのあるツンとしたこの声は
「柿田…」
柿田が腰に手を当てて立っていた。
「何してるの」
「小塚に今日のことを聞いてたんだけど」
「…そう。じゃあちょうどいいわ。そのことで話があるの。少しいいかしら」
えー
チラリと小塚を見ると、滲む汗を拭って背を向ける。
「ぼ、僕帰る」
そうして返す言葉も待たず、早歩きで去ってしまった。
仕方なく柿田に向き直る。
「なに」
「……今日のことと…片桐くんのことで」
…。
僕と2人になると何故か柿田は急にしおらしくなり、腰に当てていた手を下ろして少し下から僕を見た。
また中に入るのはめんどくさかったので生徒玄関近くのベンチに座った。
「…」
「…」
片桐…僕にやられたこと話したのかもしれないな。
だとしたら…だるいな。
「片桐のことって?」
先にそちらを聞くことにした。
僕の問いに一瞬体をこわばらせた柿田は小さくため息をついた。
「…誠に聞いたの。片桐くんのやったこと…」
ああそう。
「最初はそんなの嘘だって思った…。でも桃が…返信せずに死ぬなんて…あり得ない」
柿田が拳を握る。
「桃が自ら死ぬはずがなかった。毎日返信したかどうか私にRINEで確認してた…。絶対生きようって…解決のために積極的に動いてくれた」
…そうか。
「だから、誠から桃のことを聞いた時…」
柿田が小刻みに震え出し、ポトポトと涙をこぼす。
「ぅ……あ、ぁ……もも…ももぉ……」
この前まであんなに僕に正々堂々喧嘩を売ってきてたのに…
女子に隣で泣かれると気まずいんだけど。
「残念だけど片桐のことは真実だよ。梅原が教えてくれたんだ」
「……っ」
「だから僕が、片桐に同じことをした」
「…そう……。片桐くんは…教室に戻ってきてすぐ…何も言わずに帰ってしまったわ…」
「……」
「……」
「もっと早く気づくべきだった…。ごめん」
「…ひかるくんは何も悪くないじゃない」
…いや
「…判断が甘かった。この現実に対してもっと…違和感を持つべきだった」

