東坡の肩を叩き、扉の前に立つ。
「…みんな、僕は今日酷いことをする。どうか、幻滅しないで欲しい」
…僕だって人間だ。大事な人とそうでもない人はいる。
僕にとって自分のグループの仲間は、初めて僕を信じてついて来てくれたかけがえのない人達だった。
あの梅原が…控えめであまり自分の意見を言うことがない梅原が、柿田達と敵対する危険を犯して僕を選んでくれた。
その信頼をこんな形で裏切ることになってしまった…
誰も死なせないなんて、ただの薄っぺらい願望に過ぎない。
口ではなんとでも言える。でも結局有言を実行できないようでは…全てただの綺麗事で、結果は甚だしいほど無力のこのザマだ。
でも…こんな状況だから仕方ないの一言で片せるほど、僕は薄情じゃない。
「僕はヒーローじゃない。みんな救うなんてできないし、正義なんて知ったことじゃない」
誰もいない扉に向かってそう呟いた。
「……」
「……」
しんとする美術室。
たとえみんなに怖がられようとも…やらなきゃいけないことがある。
「…じゃあ」
小さな声でそう言った。
その時
「何してもいいよ、ひかる」
涼しい声がそう言った。
山野だった。
ルーズリーフを握りしめ、僕を真っ直ぐ見ている。
「ヒーローがやるべきことは、他人を慮ることでも優しさを振り撒くことでもない。その時の自分の敵をぶちのめす事。正義なんて言い様だから」
山野がゆっくりと近づてきて、ボサボサの目にかかっていた僕の癖毛を耳にかけてくれる。
「だから…ぶちのめしてきてよ。私達の代わりに」
……。
山野の後ろでみんなも深く頷いた。
「行ってくる」
僕はガラリと扉を開け、決して緩くはない歩度で進んだ。

