教室に入るとクラスメイトの話題はあのメッセージのことばかりだった。


「やっぱお前らにもきたのか『8』!」
よしきが輪の中心で騒いでいる

「マジでバグったのかと思ったぁー」
坊主頭の立花慎一郎がグローブを見せつけるかのように磨きながら言った。

「それな!動かなくて焦ったわ」
そんでその坊主頭を磨きながら笑っているのが杉山晴。
小柄でよしきに続くムードメーカーの男子生徒。


「私『誰が』だった…なんなのかな…あのRINE」
背が高く、おとなしい中谷美優が心配そうな声をだす。

「そんな気にすることないよー!私も『誰が』だったよ!誰の名前入れたでしょーか!」
浜崎葉月が中谷の肩を叩きながら笑う。あの人は気遣いのできるお姉さんって感じの人。

「私の名前入れたんじゃないでしょうねぇ!教えなさいよ!」
越田千夏が浜崎に飛び掛かる。
あの2人は仲がいい。
「答え言ったらゲーム的にアウトでしょー?」
「確かにー!」


「りくー陸はなんだったのー?」
お。
あれは、我がクラスの有名なラブラブリア充の片割れ、辻原咲だ。おさげ頭が特徴的だけど、ぶっちゃけ顔の印象は薄い。
まあでもこんなこと言うと同じく顔の印象の薄い彼氏、秋沢陸に怒られる。
「何をしただったよ」
「ええっ!私も一緒!」
「お揃い?」
「お揃いお揃い!」
「嬉しいな」
「もぅりくー!」
うっ…きっつ
勘弁してくれ、吐きそ。


「俺は『どこで』だった。なんなんだよアレ、くそうぜぇ。スマホ使えねーし、邪魔くせぇ」
大本源志が舌打ちをして足を組む。
いや、誰もお前に内容なんて聞いてないよ。
彼が喋ったのに反応して斜め後ろの小塚がビクッとする。
大本がよく太っている小塚を嫌味に揶揄うからだ。


うちのクラスは個性が強い。
そんな個性的なクラスメイト達はどうやらみんな返信したみたいだ。
現代を生きる我々にとって、もはや体の一部になっているスマホが使えないというのは由々しき事態なのだ。