少しイライラして教室に向かう。
1年3組の教室の扉に手をかけると、中から話し声が聞こえた。
…これは枕崎と山野か。
ういー入りづらい。
悪いと思いながら聞き耳を立てる。
「…だっていつ死ぬかわからないだろ?」
「うん」
なんの話だろう。
「死にたくはないだろ?」
「…まあね」
枕崎の問いに山野が答えている。
「でも…生き残れる人間の方が少ないと思う」
山野の静かな声。
「それでも俺は…山野には生きてて欲しい」
……
「それは……私もそうだよ」
あ、甘酢っぺぇ。
「でもいつかそれも難しくなるかもね」
山野の声はいつも感情が読み取りづらい。
「…ああ。絶対生き抜こうとは言えないな」
反対に枕崎は案外わかりやすい。
「俺は山野が指名された時、血の気が引いたよ」
「なんで?他の人の時は?」
「もちろん、毎回怖いと思う。でも俺だって人間だから、大事な人とそうでもない人はいる。山野は前者」
堅苦しい好意の向け方だな。
「…私は…よくわからない。誰かを大事に思う気持ちも、特別に思う気持ちも」
……。
「でも、枕崎が死んだら…嫌だなぁ」
…うお、これ枕崎どんな顔して聞いてるんだろ。
仮にも好意を持つ人間にこんなこと言われたらドキドキするのかな。
僕もよくわからない。誰かを大事に思う気持ちも、特別に思う気持ちも…。
ふと、久遠さんの顔が頭をよぎる。
…僕も、彼女が死んだら嫌だなぁ…
「……山野」
枕崎の低い声になぜか僕が緊張する。
「…何?」
ドキドキ
「気づいてるでしょ?言わなくても」
「……まあね」
「山野は?」
「…わからないの?頭いいのに」
「山野はわかりづらいから」
「…じゃあ、わかるまで死なないように頑張って」
「……ケチ」
「悪かったわね」
…もし、こんなゲームがなければ二人はどうなっていたんだろう。
お互い素直に気持ちを伝えられていた?
それとも…こんな風に話すこともなかった?
枕崎がただ、窓際に座る彼女の横顔を盗み見ているだけだったかもしれない。
こんなゲームがなければ…死ぬかもしれない恐怖に追われながら、二人で手を取り合うことはなかった。
『普通』ではないこの窮地では、今この時を精一杯生きなければならない。

