「幻滅なんてしてません」
僕はあまり間を置かず、そう答えた。
不思議そうに首を傾げる新田さとるさん。
「だって僕、あなたになんの期待もしてなかったし、自分の理想と重ねようとも思ってないので」
というか理想の父親像なんてないし。
「僕が今日ここへ来たのは純粋な興味です。あなたを責めようとも、咎めようとも、縋ろうとも、何も思っていません。ただ、どんな人間なのか気になっただけです」
犯人が僕にこの情報を送った理由より、純粋に新田さとるという人間への興味。
それだけだ。
「……」
さとるさんは少し目を開いて僕を見ている。
「君は………私に、似てしまったようだね…」
?
「なんですか?」
「……いや、なんでもないよ」
「…あの頃の退屈な生活は、紛れもなく幸せな生活だったのかもしれないと、私は今になって思うよ。この中は…あの時とは比べ物にならないほど退屈なんだ」
そう言って、部屋をくるりと見回す。
そりゃそうだろうな。刑務所なんて退屈で退屈で仕方ないだろう。
「…働く目的もあった、帰る家もあった、そして君もいた。私は自らそれらを手放してしまったんだ」
少し切な気に笑う。
「でも…退屈から逃れようとするのは、人間の性です。僕だってそうだし、他の人間だってそうです」
「……そうだね。その通りだ」
僕の言葉に、光のない目で頷いた。
「私は間も無く死刑になる。当然のことだ。足掻こうとは思わない。こんな情けない父親で申し訳なかった」
…。
「父親というのは血縁関係にあるからそう呼べるだけです。僕はあなたの存在すら知らなかった。だから何も詫びることはありません」
「……そうだね…父親なんて名乗れるような関係でもないか」
…そうですね。
短い沈黙。
さとるさんの息を吸う音がそれを破った。
「君、今は高校生かい?」
さっきの暗い表情から一変して、目に蛍光灯の光が入っている。少しだけ柔らかい。
「はい。高校一年生です」
「そうか…友達はいるか?」
「います。祐樹って親友がいます。他にも枕崎っていうすごいイケメンで成績優秀な韓国人と、柳谷っていうクールな男の子と、あと山野っていうすごい綺麗な女の子…それから」
僕の話をなぜか悲しそうに笑いながら聞いている。
特にその理由は聞かず、僕は話を続けた。
「東坡っていうヤンキーとも仲良いし、最近成川っていう子ともよく話すようになりました。
あと…久遠さんって言うお嬢様がいるんだけど…今日もここまでついてきてくれて、おっちょこちょいだけど可愛らしくて、一緒にいると暖かい子です」
「そうか…そうか」
嬉しそうに深く頷く。
「他にも、いっぱいです」
だいぶ…減ってしまったけどね。
「学校は…楽しいか?」
……。

