「……」
「……」
「あ、えっと、初めまして。新田ひかるです」
「……」
「今日は急な面会なのに無茶に応じてくださり、ありがとうございます」
とてつもなく他人行儀になってしまうが、まあ間違ってはいない。
僕にとっては初めましてなのだから。
「…いや、こちらこそ。こんなところまでご足労をかけたね」
おお…しゃべった。
深く、クリアな声だった。
「……」
「……」
「僕の…父親なんですか?」
そんな質問をすれば、新田さとるさんは少し目を外してふうと息を吐く。
「ああ、そうだ。君は私の息子。その名前も私がつけたんだ」
あ、そうだったんだ。
「…なぜ、今日は来てくれたんだい?」
ああ、そうだよね。
急だもんね。
「ひょんなことからあなたの存在を知ったので、会っておこうかなって思って」
「…そうか。来てくれてありがとう」
「…いえ」
「……」
「……」
会話が続かない。
なんだかこの人には不思議なオーラがある。
ぼんやりとしてしまう。
このガラス越しにさらに靄がかかったように、遠く感じる。
凶悪犯罪者というくらいだからヤバい人かと思ったが…全くそんな面影はなく
ただ『普通』の人だ。
「……」
「…その髪」
?
さとるさんが僕の髪を見ている。
「厄介な癖毛だよね。くしも通りにくいし、寝癖も治しづらい」
そう言って自分の髪に触れる。
少し長めで軽く結ったスタイルがよく似合っている。
「…僕も、髪伸ばそうかな。あなたみたいに結んだらかっこよくなるかもしれない」
そんなことを呟けば
「きっとすぐ鬱陶しくなるよ」
そう、少し笑って言った。
笑うと控えめな八重歯が見える。
どこか魅力的な人だ。
「…少し、昔話に付き合ってくれるかい?」
…
少し虚にも見えるさとるさんの目が僕を見る。
「はい」
きっと僕も同じような目をしているんだろう。
なんだか不思議な気分だ。

