「………ひ…」
久遠さんが停止している。
「ひかるさ…」
「うわあああああああ!!」
うおっ
なに
久遠さんが何か言おうとした瞬間、誰かの叫び声が聞こえた。
何事かと思ってそっちを向けば…
「ああ、花里」
口を大きく開けて絶叫した花里と目が合う。
その後ろで梅原が同じような顔をして固まっていて、祐樹と東坡が微妙に口角を上げている。
「ひ、ひかるく…い、いま…久遠愛菜と…き、キキキキ、キスシタ?」
一番だるいやつに見られた。
「なっ何してんの何してんの!!ちょっと!嘘でしょ!?嘘って言って!嫌だアアア!!」
「ひかるく…」
何故か梅原もカチコチになっている。
「きっひか…あっきっ…わったしっ…」
久遠さんが真っ赤になって機械みたいな喋り方をしている。
「早くクリアしないとって思って。通知音鳴ってたよね。スマホ見して」
ばしっ
「イッタ!何すんだよ祐樹」
久遠さんに手を差し出した僕の頭を、祐樹の拳骨が殴った。
「お前なァァァ!!」
なんだよ。
「わっ私ちょっと失礼します!」
久遠さんはそう叫んで僕にスマホを押し付けると、走ってどこかへ行ってしまった。
?
「そんなに嫌だったのかな…」
「ばっっか!ちげぇだろアホ!ひかるお前バカなのか!せっかくかっこよかったのにその後の対応が酷すぎる!」
祐樹が頭を抱えている。
「いやーキスしたとこまでは完璧だったのにな」
東坡が笑いを堪えながら言う。
「完璧なわけあるかァァァ!!」
そんな東坡と僕の間にジャンピングで飛び込んできた花里。
僕も東坡も綺麗に避けたので、ベシャッと地面に倒れる。
倒れたまま顔だけ起こして僕を睨む花里。
「何してんの!?きっっきすって!キスって!しかもあんなスマートに!なに!?なんなの!?ひかるくんかっこいい!でも許せないよおおお!」
何こいつ。
「ひかるくん!僕にもやって!僕にもしてよおおお!じゃないと僕動かないよ!ここから動かないからねぇ!」
そう言って僕の足を掴む。ゾンビかよ。
「離せ」
「チューしてくれたら離す!」
だるいっての。
「わかったわかったしてやるから離して」
「!!ほんと!?言ったね!?言ったからね!」
花里がものすごい勢いで立ち上がり、僕の前で両手を組み合わせて目を瞑っている。
そんな花里を廊下に取り残して、僕らは教室に入った。

