「…い、いいわよ好きにすれば。後悔するだけなんだから…」
柿田がダサい文句を言って、残り1人に目を向ける。
僕も1人残っている人を見る。
「あ…えっと」
成川である。
目を泳がせている。
「成川くん、こっちにおいで。安全よ」
柿田が手招きする。
成川は静かに僕を見る。
そして…
「ごめん…ひかるくん」
あら…そうか。
まあ仕方ない。なにも咎めることはない。
柿田が勝ち誇ったような顔をして手を伸ばす。
「賢い判断だわ」
しかし…
成川は柿田の方は向かず、僕を見ている。
「ごめんひかるくん、お荷物になるかもだけど…そっちに行ってもいい?」
…え?
成川が申し訳なさそうに僕を見ている。
柿田が顔を歪ませる。
「うん、いいよ。おいでよ」
僕の言葉にぱあっと表情を明るくした。
そして小走りで僕側へ線を超えた。
柿田のグループは12人。
柿田、三谷、よしき、牧村、檜山、杉山、渡辺、
佐滝、浜崎、小塚、宇佐美、そして片桐。
僕のグループは10人。
僕、花里、久遠さん、祐樹、梅原、柳谷、東坡、
山野、枕崎、そして成川。
向こうのほうが人数は多い。
しかしこっちには枕崎も柳谷もいる。
思い込みプログラムについて詳しい久遠さんもいるし、心強い東坡もいる。
別にグループ同士で殺し合いをするわけじゃないけど…
誰かに頼られることが、信じてもらえることが
こんなに嬉しいなんて…予想外だった。
「…あっそ。別にいいけど。とにかく私たちはあなた達とは協力しないから」
柿田がそう言い捨て、ズカズカと校舎に戻っていく。
「そっちが協力しないってことはこっちも協力しないってことになるからな。残念だけどー」
柳谷が嫌味に涼しく言う。
あっちのみんなはその言葉に不安そうな顔を浮かべ、柿田の後に続いた。
残った僕のグループ。
「ひかる…越田千夏が…」
山野が呟いた。
柿田が触れもしなかった越田の遺体。
浜崎をずっと励まそうと笑顔で居続けたこの人も、死ぬ時はなぜだなんでだと叫んでいた。
そりゃそうだよな。
君は僕のグループなんだね。線より僕側にいる。
「…越田。ここに置いて行くけど…あそこで腰を抜かしてこっちを見てるスーツ連中になんとかしてもらうからな」
僕は動かない越田に合掌してそう言った。
「行こうみんな。生き延びよう。絶対に」
僕の言葉にみんなが頷いた。
あのスーツ連中は越田の死に様を見ていたと思うけど…
まあだからと言って何かしてくれるわけでもなさそうだ。とにかく今は、自分たちのことを考えよう。
僕が歩き出すと、みんなも同じように合掌をした。

