「ありがとう成川。また出口に一歩近づいたかもしれない。またなんかあったら教えてくれ」
柳谷が口早にそう言って立ち上がる。
「ちょっと整理して色々考えてみる」
カバンを雑に掴み、早足で退場していく。
長考モードに入った柳谷は行動が早くなるらしい。
「…話すの楽な内容じゃなかっただろうに…ありがとう」
山野が優しく言う。
「私も少し考えてみるよ。また明日」
静かに出口へ向かう。
「山野、俺も帰る」
枕崎が駆け足で隣に並ぶ。
「成川、話してくれてありがとう。また詳しく聞かせてくれ。じゃあ明日」
「詳しくって、今聞かなくていいの?」
山野が隣に並んだ枕崎を不思議そうに見る。
「明日聞く」
「今でいいじゃん」
「今は帰るの」
山野って割と鈍感なんだね。意外だ。
「変なの」
「帰ろ」
「いつも思ってたけど逆方向だよね私たち」
え、そうなの?
「門までは一緒」
「ふーん」
気づいてあげて山野。
こんな枕崎見たことないよ。
と思ったけど、山野が揶揄うように笑ったので案外楽しんでいるのかもしれないと思った。
「…」
ぽかんと2人を見ている成川。
「美男美女だよねー」
「えっ…あっやっぱそうなの?」
「いや、付き合ってはいないみたいだけどね」
「枕崎の片想いだよ」
片桐が呆れたように笑った。
「…いつ死ぬかわからないもんね…後悔のないようにしないと」
成川が暗い声で言った。
「…それはそうだな」
片桐が2人の出て行った方を静かに見ていた。
「俺も行くわ。ひかる帰る?」
ガタンと席を立った東坡。
ああ方向一緒だもんね。
あー…でも
「先帰ってて。僕は成川ともう少し話すよ」
「え?」
成川が素っ頓狂な声を出す。
「わかった。じゃまた明日」
「また明日」
東坡を見送り、成川に向き直る。
「話すって?」
「いや、特に話すことがあるわけじゃないけど…」
チラリと、残っている片桐を見た。
しんとする教室でゆっくりこちらを見た片桐。
「帰らないの?ひかる」
「…成川と帰る。途中まで方向一緒だから」
「…そっか。じゃあ俺は先帰るよ。また明日」
「うん」
「返信しろよ。2人とも」
「もちろんだよ」
…
片桐が出て行った教室。
成川と2人残って沈黙が続く。
「ひかるくん?」
沈黙を破った成川。
「ああ…ごめん。帰ろうか」
「うん」
教室の出口で少しだけ振り返り、片桐の座っていた席を見た。

