「私、兄に少し相談してみます。この前話した時になんとかできないか研究してみるって言っていたので、何かわかることがあるかもしれないですし。本当にこのプログラムが関係しているのなら開発者である兄は強力な助っ人になるはずです」
それは間違いない。
犯人以外でなんとかできるとしたら久遠さんのお兄さんしかいない。
久遠さんは鞄をぎゅっと握り、駆け足で教室を出て行った。
「…久遠愛菜って出席番号8番だよね」
少ししてそう呟いたのは枕崎。
それ前に柳谷も言ってた。
「うん」
「メッセージの送信者『8』
まさか出席番号なんて安易なものじゃないとは思うけど、久遠愛菜の転入からゲームが始まり、強制思い込みプログラムのこともあり…彼女が何か鍵を握ってることは確かだと思うんだけど…」
頭を抱える枕崎。
「それは俺も思った」
柳谷が唸りながら机にだらんと体を預ける。
彼はゲームのプレイ方法や生き残る術より、犯人探しに積極的だ。
「8…なんの数字なんだろ。犯人の目的はなんなんだ…何故俺たちのクラスなんだ…」
目的…
8…
「柳谷的に怪しいと思ってる奴って誰?」
枕崎が体の向きを変えて柳谷に聞く。
「んー情報が少なすぎて絞れない。片っ端から聞いてはみたけど…特に成果は得られなかった」
ああ、僕も聞かれたやつね。
あ、ていうか
「柳谷、そういや小塚はどうだったの?」
「ん、あーあの後聞いてみたんだけど、やっぱりあの時は大本が怖くて嘘ついたって。入力内容は話せないから察してくれって言われたよ」
まあそうなるか。
「小塚?ひかるは小塚が気になるの?」
「少しね。普段から目立たない人だったけど、ゲームが始まってからなお目立たない気がして」
「なるほどね」
「俺もそこら辺かな。個人的には渡辺も少し気になってはいるけど…根拠はないし、情報が少ないからってだけの理由」
柳谷が渡辺の席を横目で見て言った。
「でも…最近、宇佐美が少し…」
宇佐美?
「なんで?」
枕崎が興味深そうに聞く。
「あいつさ、まあ野々村が死んだショックで消沈してんのかもしれないけど…このゲームが始まる前はかなり目立つやつだったよな。割とクラスの中心にいたし、杉山や横澤と一緒に騒いだりするタイプだったのに、最近は気味悪いくらい静かなんだよ」
ああ…確かに。
「今日ひかるが他の奴らと揉めてる時もぼーっとしてて、なんかちょっと正気じゃないようにも見えた」
なるほど。
「枕崎は?」
柳谷の問いにんーと唸る枕崎。
「正直わからん。久遠愛菜が何かしら関わってるのは間違い無いと思うんだけど…どうも『8』って数字が気になる。何かヒントになってるはずなんだ…転校…出席番号…」
「久遠さんの転校で出席番号ズレたよね」
「…え?」
頭脳派2人の会話に割って入ってしまった僕。
2人がきょとんと僕を見る。
「ゲームが始まる前は33人だったけど教室の席の数はずっと34個だったんだよ。僕だけ後ろの席の人がいなくてちょっと寂しかった。最初の席替えからずっと」
「…」
「…」
あ…僕、見当違いなこと言った?
なんか、自分で話しててなんの役にも立たない情報をぶっ込んでるかもって薄々思ってたけど。
やっぱそうだよね…?
8関係ないもんね?
しんとする空間。
あーやだ恥ずかしい。

