「う…っざ、い!!」
ばん!
僕は上に覆い被さっていた中村を掴み、グルンと回転した。
形勢逆転。僕が中村に覆い被さる体制。
中村の手は相変わらず震えながら僕の首にカッターを伸ばしている。
でも僕が上に来たおかげで力が入りづらくなったのかさっきよりも弱い。
中村の手首を捻ってカッターを奪う。
そしてそれを地面に放り投げた。
東坡の足元までスライドしていったそれを東坡が拾い上げた。
中村はボロボロ泣きながら僕の髪の毛を掴んでいる。
「死ねよっ!死んでよ!!」
「中村」
なんなんだこのバカな女は。
「野々村ぁぁぁ!」
まじでうざい。
僕は中村の両手を掴み、地面に押し付ける。
床ドンってやつか。
初めては好きな女の子が良かった。
「中村」
「死ねぇぇ!!」
話にならない。
この猿の如く騒ぎ立てる馬鹿な女を睨みつける。
僕はその耳元に口を近づけた。
そして自分の出せる一番低い小さな声を出す。
「野々村が好きなのは美人な子。中村は器ちっさいし不細工だから恋愛対象じゃない。生まれ変わってきなよ。今世には野々村もいないんだし…生きてる意味ないでしょ」
「っ」
中村の動きが止まった。
その瞬間、駆け寄ってきていた花里と祐樹に引き剥がされる。
しかし中村はもう暴れることはなく、ただ茫然とどこかを見ていた。
「メッセージ…返信しないと死んじゃうから気をつけてね」
僕はいつも通りの声でそう言った。
メッセージ
返信しなければ死ねるよ。
きっと中村には、そう聞こえたはずだ。
中村は口を開けてボロボロと流れる涙をそのままにして動かない。
一か八かの選択だったけど、正解だったみたいだ。
どうやらこの女は馬鹿だから間に受けてくれたみたいだ。
ありがとう。
馬鹿でいてくれて。
これで僕に死ねって言ったことチャラにしてあげるよ。

