「そうじゃねぇよっ!!」
っ!
その時ものすごい怒鳴り声が響き渡った。
ビリビリと脳が揺れてハッとする。
ガシャンと誰かが携帯を落とした。
「……冷静がどうとか今後がどうとかじゃなくて…慣れちゃダメだって言ってるんだよ。仲間の死に。
ひかる、お前だよ」
え?
怒鳴り声を上げ、そう続けたのは…
祐樹だった。
初めて聞いた大きすぎる声。キッと目を見開き、僕に向かってくる。
親友の…見たことない、怒りと悲しみのぐちゃぐちゃの顔。
「ひかる。間違ってるとか間違ってないとか、そういうことを言ってるんじゃない。忘れるなって言ってんだ、ゲームが始まる前の生活を」
…。
祐樹の力強く濁りのない綺麗な目が僕を捉える。
「ひかるは順応しすぎなんだよ。
確かにひかるのおかげで助かったことはいっぱいある。内容を話しちゃダメだとか、言葉の捉え方とか、お前のおかげで俺も生き延びる兆しがわずかだけど見つけられた」
真正面に立つ祐樹の手が、僕の肩に乗る。
「でも人間として、死に慣れるな!クラスメイトの死に慣れちゃダメだ!俺らが今まで暮らしてきた当たり前を忘れるな!
ゲームに飲み込まれすぎるのは、これもまた犯人の思惑通りになっちまう!
いいかひかる、今の俺たちは『普通』じゃない!だから冷静になれなくてもいい!仲間の死に毎度毎度嘆いたっていい!
だから頼むからっ……無理に順応しようとして自分を殺さないでくれ」
……。
祐樹が僕の両肩をさらに力強く掴む。
「ひかる、しっかりしろ。目覚ませ。
お前言ってただろ?平和な生活は当たり前じゃないよねって。それと同じだよ。それと同じように、命が簡単に奪われるような生活も当たり前じゃない。どっちも誰かにとっては当たり前で、誰かにとっては当たり前じゃないんだよ。だから慣れなくていい。順応しなくていいんだよ」
「……」
「あぁぁ!もおおっ!ひかる!歯食いしばれよ!先に謝るからな!ごめん!!」
…?
ぎゅっと眉間に皺を寄せて困ったように眉毛を垂れ下げた祐樹が腕を振りかぶった。
そして
ドゴッ!!
!
ボケっとしているうちに祐樹の拳が僕の頬を殴ったのだ。
運動部の男子の本気の拳。
僕は耐えきれず地面に倒れ込んだ。
「ひかる…頼むよ、壊れないでくれ。戻ってこい」
何故か祐樹は苦しそうな顔をしていた。
……
祐樹に殴られた。
めっちゃ痛い。
クラスメイトの死に慣れるなと
そう言われた。
僕は教室を見渡した。
空席は…全部で10個。
瀬尾、多田、野々村、中谷、大本、
時川、立花、深川、秋沢、辻原
…ああ
もうこんなにいなくなってたのか。
34人だった1年3組は
24人にまで減っていたんだ…

