「正しいって…なによ、咲が死んだのに…。生き残って欲しいと思って行動した私たちが間違ってたってこと?」
珍しく牧村が声を荒げた。
沈黙を破り、ガタンと椅子を倒して勢いよく立ち上がった。
「そうだ…もしかしたら助かってたかもしれなかった!クラスメイトが死ぬことに慣れろっていうのかよ!それこそ間違ってる!!」
よしきが叫ぶ。
「勝手に死ぬって決めつけて見捨てるなんてあんまりだよ!クラスメイトなのに!友達なのに!」
浜崎が立ち上がった。
「そうだよ!おかしいよ!」
越田も便乗する。
だるいだるすぎる。
友達を想うが故なんだろうけど、自分らの命の危機にほざくセリフじゃない。
馬鹿なのか。それとも引くほどお人好し?偽善者?
クラスメイトを助けるために死んでくださいって言ったら死んでくれるのかこいつらは。
ヒーローじゃないんだから。
どうせ自分が一番可愛いんだからさ。
効率よく生き残る術を導き出すのは当たり前のことだろ。
なぜわからない。
ふつふつと
フツフツと黒い何かが僕の中で暴れて胃液を乱す。
「そう言ってるんじゃない。自分たちが生き残るための最善の選択は、他人を慮ることじゃなくて、冷静に状況を分析して判断することだって言ってんだよ。運良くひかるが3分という数字を出してくれたけど、もし出ていなかったらまた『今』って言葉が選ばれた時、俺らは同じように焦るたけでクリアできずに終わる」
枕崎の冷静な回答。
まさにその通りだ。
「っんなの!冷静でなんかいられるかよ!!こんな意味不明な状況にぶち込まれて!ついこの前までは一緒に笑ってた奴らが当然のように死んでいくんだぞ!」
よしきが更に声を荒げる。
そういうゲームなんだってば。
今更何ほざいてるんだよ。
ふつふつと…ふつふつ
「…ひかるさん?」
「咲にも秋沢くんにも…もう会えないんだよ…っ!それなのに状況を分析しようなんて、できるわけないじゃない!」
牧村は涙を流し始める。
「死ぬなんて簡単に言わないでよ!決めつけないでよ!最後まで足掻かせてよ!なんでひかるくんみたいな関係のない人が勝手に死を決めつけるのよ!」
浜崎が僕を指差して叫ぶ。
「そうだよ!やってみなきゃわからないじゃん!友達を思って何が悪いの!?」
越田も大声を出す。
えーちょっと待ってよ。
何言ってんのかよくわからないんだけど。
足掻かせてよって何だよ。勝手にしろよ。
僕誰にも迷惑かけてないでしょ?
なんで俺が悪者になってんの?
3分って答え出してあげたのに、なんで?
おかしいよみんな。
変だよ。普通じゃない。普通じゃないよ。
普通普通…
ふつふつと…ふつふつ
順応しなきゃいけない。
ゲームが全てだ。
ゲームが全て。
僕は何も間違ってない。
何も間違ったことはしてない。
なんでそんな目で僕を見るの?
俺のやったことの何が間違ってるの?
何も間違ってない。
何も間違えてない。
ふつふつと、ふつふつ…
胃液が喉まで昇ってくる。
ふつふつと…ふつふつ
ふつふつと、ふつふつ
僕は、何も
何も、間違ってない
間違えてない
間違えてなんかない
「俺は間違ってない」
ばちん
…?
なんの音?
耳の中で何か音がした、気がした。

