「『今』って……なんなのよ」
柿田が頭を抱えた。
「3分」
「は?」
僕の答えに対する片桐の声。
みんなの視線が更に鋭く刺さる。
「2件目のメッセージが来てから辻原が死ぬまで、3分だった」
僕は自分のスマホに表示されるストップウォッチのアプリを見せた。
息を呑む声、口を開けるもの、僕と目が合うもの。
「…ひかるお前…計ったのか?」
片桐が口をガクガクさせながら聞いてくる。
「うん。だって今後も同じのが出るかもしれないでしょ。情報は必須だ。ゲームを攻略するためにはルールに関する知識が多い方がいい」
「……」
え、なんでそんな顔するの?
「…時間を計れたのって…辻原が死ぬって分かってたからだよな」
……え?
僕にそんな声をかけたのはよしきだった。
ゆらりと席を立つ。
「辻原が死ぬだろうって思ってたから、死ぬまでの時間を計った。『今』の答え合わせをするために」
ん?そうだけど…
「ひかる……お前変だよ。昨日も思ったけど…なんでそんなに冷静なんだよ。今回だってそうだ。みんな辻原を起こすのに必死だった…助けようと思ってた。
でもお前は、辻原が死ぬ可能性を真っ先に考えたから…時間を計ることを思いついたんだろ?
そうでなきゃ計らない。辻原が死ななきゃ答え合わせはできないから…。なぁ俺の言ってること分かる?」
分かりづらいけど、まあ分かるよ。
「なんでメッセージが来てすぐに時間が計れたんだよ。なんで、普通できねぇよそんなこと。普通そんな考えにならねぇんだよ。助けられたかもしれないだろ」
ふつうね。
「……なあ、ひかる。俺はお前が犯人だとは思ってない。犯人だったら時間を計る必要はないし、お前は昨日指名されてるし、犯人から直接連絡も来てる…。犯人である根拠は一つもない。
でもひかる変なんだよ。ずっと…頭のネジが外れてる」
……。
めんどくさいことになったな。
クラスメイトの視線が刺さる中、僕は席を立つ。
「逆に聞くけどさ、秋沢がメッセージが来てから割とすぐ死んだのをみんな見てたよね。だったら2件目のメッセージが来た時点で、気を失ってる辻原を起こして、2階から4階の上の屋上まで登って、鍵開けて走れる時間があると思った?
確実に不可能でしょ。辻原が生き残る可能性はほぼ皆無だった。
だったら自分たちが生き残るために、その糧になる情報を仕入れようとするのは至極当然のことだよね」
よしきが眉間に皺を寄せる。
「クラスメイトが死ぬ。そんなふざけた状況にぶち込まれて命が危機に晒されてる中、毎度毎度取り乱して叫び散らかしてたら解決するものもしない。
クリアする上で絶対失ってはいけないのは冷静さだ。このゲームに順応しない限り生き残れない。僕はそのためにやれることをやったんだ。
僕が計らなかったら誰もわからなかった。次同じような内容が来た時、二の舞を被ることになる。
ねぇ、僕の言ってることわかる?」
よしきをじっと見る。
目があったよしきはこめかみから汗を伝わせて一歩後退りした。

