いつどこで誰が何をした



僕と久遠さんの席を中心に集まる、なかなか珍しいメンバー。

まだ教室に残っていたクラスメイトが少し不思議そうにこちらを見ていたが、みんなあまり興味を示さなかった。
まあ最近は至る所で会議が行われてるからね。


「昨日、兄と話す機会があったのでこのクラスで起こっていることについて話してみたんです」
早速久遠さんが話し始める。
「やはり、この常軌を逸した現象に強制思い込みプログラムが関係していてもおかしくないと言っていました。データの紛失したタイミングから見ても可能性は高いと」

「…やっぱり」
枕崎が腕をさする。
過去に注射を打たれたところだ。

「いきなり奇怪な死を遂げたこと、非現実的な出来事が連続して起こっていること、現時点で私が分かっていることを事細かく説明してみました。
兄の答えは、そんなことができるのは、他でもない個々の人間そのものだということでした」

…え、どういうこと?むずかしいぞ。
個々の人間そのもの?
わからないのは僕だけかと思ったけど、枕崎も?を浮かべている。


「ここからは強制思い込みプログラムのことになりますが…まず第一に、開発を中止した理由はこのプログラムにほとんど不可能がなかったからだそうです」

「不可能がない?」
東坡が繰り返す。

「はい。人間の脳にはとんでもない数の神経細胞があって、我々は普段そのほとんどを使っていないそうです。だから科学的にも人間の限界というものは分からない。
ごく稀に、科学的に説明のつかない力を持った人間をテレビで見かけますが、それもそういった脳の持つ力の一つだそうです。だから人間が脳の力を十分に使えたら何ができるのか、それは未知の領域だそうです。
思い込みプログラムはそれらを強制的に行わせるものです。人間の限界がわからない限り、プログラムの限界もわからない」

なるほど…不可能がない。
だから危険すぎたということか。

装置の限界を知るためには人間の限界を知る必要がある。
でもそんなの人体実験でもしないと答えは導き出せないし、もしその限界が恐ろしい領域だったら…悪用する人間は必ず出てくる。
だから開発は中止になったのか。


「なるほど…個々の人間そのものか」

枕崎が腕を組んで下を見た。
どうやら理解したようだ。
僕はわからん。分かりやすく説明して。

「血を吐いたり心臓を止めたり、首と胴体を引きちぎったりできるのは他者ではなく個々の人間、つまり本人達の脳がそう命令する。…高度な自殺だ」
自殺…

思い込みプログラムの恐ろしさ。
そのプログラムに応えられる人間の脳…。