もういい。僕らでなんとかしよう。
切り替えて教室を見渡す。

いないのは…亡くなった人達と、あとは?


「あれ、亜由は?」
三谷がキョロキョロしている。
深川以外の生存している生徒はすでに登校を終えていた。

浜崎と越田の顔色が悪くなる。
「連絡つかない…」
牧村がスマホを見て声を震えさせた。


いや、大丈夫だ。
深川は昨日特に変わった様子はなかった。

強いて言えば時川が亡くなったことに衝撃を受けていたこと。
そのことを片桐に話そうとしたところまでは俺も見ている。


隣に座る片桐も心配そうに深川の席を見ている。
「片桐」
「ん?」
「昨日の深川なんだったの?」
「ああ…時川のことだよ。電話で話した内容とか、そういうこと」

「死んだ原因わかったの?」
「……いや。電話ではいつも通りだったし、特に入力内容も話さなかったらしい」
…そうか。

「でも深川の様子は至って普通だったよ。話もそんな長引かなかったし、普通に帰って行ったけど」
ふつうね。


もし、これで深川が死んでいたら…

時川に続き、深川。
死ぬ根拠のない人間が死んだことになる。
特に精神崩壊していたわけでもないし、時川に関してはとても返信しないとは思えなかった。

二人の共通点はなんだ…?
片桐くらいしか思いつかないけど。
横目で片桐を見た。
不安そうに深川の席を見ていた。


「ひかるさん」
後ろからか細い声がかかる。

「久遠さん?どうしたの?」
「…あとで少しお話があるんです」
え、なに、改まれるとちょっと緊張しちゃう。
「兄の強制思い込みプログラムについてです」
あ、ああ…はい。
「おけです」


そうこうしているうちに時間が近づいてくる。
みんなが息を呑んで携帯を見つめる。
さあ…誰が指名されるのか。


ピロン!


聞き慣れた通知音
凍る空気
ゆっくりとスマホを開いた。



ーー


本日の内容。
実行してください。

『午前中
美術室で
新田ひかるが
さした』


ーー



……

来たか。


僕の番だ。