15時
「時間だ」
枕崎が時計を見て低い声で言った。
山野が頷く。
ジャージを着ている山野は今までに見たこともない緊張の表情をしていた。
成功しますように。
「…よし」
山野の覚悟の声。
まずは理科室の机の上に登り、そこから派手なジャンプをして飛び降りる。
教えてもらったのであろう綺麗な受け身をとる。
しかし通知音は…
「来ない…」
枕崎が顔を顰めた。
「…やっぱりここから飛び降りなきゃダメみたいだね」
山野が窓を見た。
「でもマットを引いて受け身を取れたとしても…やっぱり危険すぎる」
片桐が歯を食いしばって言う。
確実にマットの上に落ちなければならない。
少しでもズレれば…
隣に立っていた久遠さんがごくんと唾を飲む。
「何もせずに死ぬよりかはマシだよ」
山野が無理やり笑った。
他のクラスメイトは校庭の方へ移動して下から理科室を見上げる。
「山野さん!頑張って!」
「落ち着いて!大丈夫だよ!」
「気をつけろよ!自分を信じろー!」
みんなの声が下から聞こえる。
僕と久遠さん、片桐は理科室に残った。
枕崎は山野からスマホを受け取り、下に降りて行った。
マットの近くで枕崎が手を振っている。
ふぅーと息を吐く山野。
「や、山野さん!頑張ってください!」
久遠さんが震える声で言う。
「…ありがとう、久遠さん」
山野が優しく笑った。
その目が僕に移る。
「できるよ。山野なら」
「…うん、ありがとひかる」
そのまま窓の外へ視線を移す。
山野の綺麗な目が夕日を受けて輝いている。
髪を揺らしていた風が静かに消えていく。
「風が止んだ!今だ山野!」
下から枕崎の声が聞こえる。
山野の目がさらにギラっと光った。
そして…
タタッ
助走をつけて思い切り窓に向かっていく。
そしてそのままバッと飛び上がった。
…まるで天使のようだった。
山野の人より薄い色をした髪が靡く。
白い肌が夕陽を受けて輝いている。
枕崎の気持ちもなんとなくはわかる。
そんなことを考えるくらいスローモーションに見えた気がした。
山野の姿が窓から消えた瞬間、片桐と僕は窓に駆け寄る。
山野が手を胸の前でクロスする。
そしてそのまま真っ直ぐに落ちて…
ボフッ!
見事マットの真ん中に着地した。
綺麗な受け身、山野は無事だ。
通知は…
枕崎がすごいスピードで山野に駆け寄る。
「クリア…ですか?」
久遠さんが固まったまま言う。
他のクラスメイトも動かない。
頼む…
と、バッと山野が手を挙げた。
親指をあげてグーサインを出している。
!!
「クリアだ!!」
枕崎のそんな声が聞こえた。
わああっと歓声が上がる。
山野が飛び上がって枕崎に抱きついた。
枕崎が驚いて二人揃って倒れる。
「クリア!クリアだ!よかった!!」
僕の声と共に片桐と久遠さんが地面に座り込んだ。
「よかったぁ…」
「よかったです…本当、よかったです!」
久遠さんが涙目になっている。
片桐も僕を見て優しく笑った。
みんなで協力してクリアした。
これが希望になる。
この成功が、この先ゲームで
僕たちの強い武器になるはずだ。
さて…僕は
山野に謝らなきゃ行けないことがあるな。

