「ユリウス殿下は忌み子とされ、現在は王都から遠く離れた辺境の地、ミルディン領の領主としてその地を治めておられる」

 この国の王家には、双子は不吉の象徴とする風習が根付いている。ロナート曰く王家に双子が産まれると、その片割れを忌み子として、王都から遠ざけるのが習わしなのだという。

 そしてユリウスの存在は、僅かな重鎮のみが知る王系の秘密。ロナートはその秘密を知る、限られた一人であるらしい。

 ランベール王妃自身は王子達を出産するまで、健康上に問題はなかった筈だ。だが、リドリスとユリウスを産んですぐに儚くなってしまった。
 出産後間も無く訪れた王妃の死が、第一王子を呪いと強く結び付けてしまった。妻の死を酷く嘆き悲しんだランベール王は、第一王子ユリウスを呪われた忌子とした。

 産後の肥立ちが悪く、亡くなってしまう事例は数多い。それも双子の出産ともなると、母体に相当な負担が掛かっている筈。
 容易に呪いと結び付けるのは如何なものかと、ティアリーゼは心中で首を捻る。

 本来ならば第一王子であるユリウスが、王太子となり、ランベールを治める者として大切に育てられる筈だった。
 しかし第一王子は忌み子の烙印を押され、辺境の地へ遠ざけられている。

 何故二人いる王子から、忌子を兄のほうだと決めたのか。
 それは二人の生まれ持った色に起因していた。
 弟リドリスは髪が薄茶で瞳がエメラルド、見事に父である国王と同じ色を宿している。
 対してユリウスは髪と瞳、そのどちらも両親からの色も受け継がず、また両祖父母とも違った。

 双子としてリドリスと共に生を受けながら、何とも不思議な話だ。
 ユリウスの持つ色では、双子で生を受けなければ王妃は不貞を疑われていた可能性すらあっただろう。
 ランベール王は実の息子であるユリウスを、今でも不気味に思っているらしい。