ウルジュワーンは、寝床の中で首をすくめた。

「だってーー
 寒くて、古傷が痛むんだもん」

「あなたが、アフダルの口真似をしても、全然可愛くないので、ダメですよ」

「朝飯、パンケーキじゃねぇし」

「……また、子どもみたいなことを………」

「マリーがオレの唇にキスしてくれたら、起きてやっても……」

「……今すぐ神の御元に行きたいのですか?
 シャワーでも浴びて、目を覚ましてください!」

 部屋の気温が、確実に、3度は下がった。

 確かな殺気がこもっている、マリーの冷ややかなもの言いに。

 ウルジュワーンは、しぶしぶ、頭からかぶっている掛け物をとって、起き上がり。

 一糸まとわぬ姿を、さらす事になった。

「……やれやれ」

 寝ぐせのきっちりついたアタマをぽりぽりと掻く、ウルジュワーンの左手は。

 親指一本を残してすべての指が無かった。

 元は、端正だった顔にも、大きな傷があり、左目はとっくの昔に、光を映すことを止めていた。

 そして、何よりも。

 右腕が、まるで、もぎ取られたかのように、付け根から無かった。

 しかし。

 他にも、無数の傷がある裸身は。

 40才に手が届くとは思えないほど鍛え上げられて、贅肉のひとかけらも無かった。

 欠損している部分も含めて、見れば。

 これはこれで。

 まるで、芸術家の作った彫刻のように美しい、とも言えた。

 ウルジュワーンは、左手に残った指と手のひらで、器用にシーツをつかみ。

 カラダに巻きつけると。

 一連の動作を、吸い寄せられるように眺めていたマリーに、ニヤリと笑った。

「そんなにオレのカラダに興味あるなら。
 一緒にシャワーに入るかい?
 好きなだけ見てて構わないし、なんだったら抱いてやろうか?
 マリー?」