あっさり、即断したウルジュワーンに、男はけっと唾を吐いた。

「欲のねぇヤツ。
 つまらねぇな!
 昔は狼だろうが、利き腕のねぇ今じゃ、野良犬以下だってぇのに!
 ……じゃあ、グリーン・アイズの意見を訊いてやろうじゃないか。
 ……出せよ。
 お前のいかれた相棒は、今、どこにいる?」

「グリーン・アイズ?
 そんなヤツは、ここにいない」

 そうウルジュワーンが言ったとたん。

 男は、大降りのナイフの鞘を払って、隻眼の神父の咽下に突きつけた。

「ウソをつけ。
 あんたが、利き腕を無くしたのは、ヤツのためだって聞いてるぜ?
 周り中、木ばかりの、ジャバルでの戦いで。
 グリーン・アイズが『ついうっかり』いつものように。
 敵もろとも味方まで全滅させたことに腹を立てた、上官が、ヤツを公開処刑しようとした。
 そのとき。
 あんたは、グリーン・アイズの命乞いをしたんだ」

「………」

「言われるままに、文字通り。
 上官の靴の裏から、ケツの穴まで犬のようにナメあげたのに。
 それでも許してもらえずに、結局。
 利き腕を丸々一本と、左手の指のほとんどを、味方の拷問係りにむしり取られた上。
 二人仲良く放逐されたって?」

「……」

「その時は。
 グリーン・アイズの方も、廃人寸前まで精神が壊れてたって言う、うわさだ。
 自分のプライドと。
 利き腕を失ってまで……
 命を賭けてまで、守ったのに。
 暴れ出したら手のつけられねぇ。
 普通の生活ができねえ相棒を、見捨てて。
 別々に暮らしている、なんてことは考えられねぇな」