そんな風に。
おびえる子どもを、なだめるアフダルの努力を。
辺りに響き渡る、狂った声が、あざ笑う。
「メリークリスマス!!
サンタだよっ!!
生きる価値のねぇ貧乏人に弾丸のプレゼントだ!!
嬉しいだろう?
これで全員。
金が無くても、クリスマスらしい赤い服が着られるぜぇ!
ぎゃはははははは!!」
何が楽しいのか。
甲高い男の声に続いて、いくつもの哄笑が続き。
バイクや、車のエンジン音も重なった。
外には、相当な数の若者達が集まっているようだった。
「神父さま」
「……ああ」
さすがに青ざめた顔のシスター・マリーに。
ウルジュワーンは、固い表情(かお)でうなづいた。
半世紀以上も、なんて。
この国は、今まで、血で血を洗う、戦いが長く続きすぎたから。
突然ふって湧いた『平和』に自分の居場所を見いだせないまま。
無駄で無謀な暴力を振るう輩や。
精神(こころ)を壊した者達も少なくなかった。
そんなヤツらに。
腹が立つほど有名な、異国の神を祀る。
小さく。
古く。
何をしても自分達に刃向かう者のなさそうな『聖クレアの家』は。
格好の標的にでも、写ったのだろうか?