頬をぶたれた少年が一人

日暮れの道で泣いている

父が憎いと声とがらせて

涙で歪んだ空見てる


遠い未来が不安でならず

呼ばれて返事しなかった

だけど やっぱり 君が悪いよ

自分を隠しているからさ



さあ鉛筆しっかり握りしめ

私という字を 書くのです

白いノートの 私にだけは

夢を話してゆくのです

君しか書けない その物語

私という名の 物語



髪を切られた少女が一人

鏡の前で泣いている

母が嫌いと声をつまらせ

自分を悔しく睨んでる


違う親から生まれていたら

違う自分になれたと言う

だけどやっぱり 君はちがうよ

そしたら君は いなくなる



さあ鉛筆しっかり 握りしめ

私という字を 書くのです

白いノートの 私とだけは

ずっと仲良く するのです

君がたどってゆく 物語

私という名の 物語






熊木杏里 「私をたどる物語」